紀元杉に触れる|屋久島・黒味岳を70代一人旅で歩いた苔の森

九州の島

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「縄文杉より、もっといい所」へ——黒味岳ツアー

元々の屋久島旅の目的はもちろん縄文杉、そのために専属のガイドさんをお願いしました。しかし、ガイドさんから「やっぱり、縄文杉が目的だよね、でも、縄文杉よりもっといい所行こう!」と言われ・・。

なんと!縄文杉よりも、もっといいところ?そんなところがこの屋久島にあるんですか?素直が取り柄の私☺️「じゃあ、お願いします!」ということで、この日は黒味岳に向かうことになりました😆

ガイドさんから勧められた黒味岳(くろみだけ)は屋久島の中央部にそびえる標高1,831mの山で、宮之浦岳をはじめとする「奥岳(おくだけ)」の一つです。屋久島の主稜線にあり、花崗岩の巨岩が積み重なった山頂が特徴です。

屋久島の淀川登山口付近から見た奥岳の山並みと晴れた空



出発は朝6時20分、戻りはなんと夕方18時という、丸一日がかりの長丁場。70代が聞くと一瞬ひるむ時間ですが、手作りのお弁当をリュックに詰めて、頼り甲斐のあるガイドさんの背中を見ると不思議と「なんとかなる」という気持ちになるものです☺️

高齢者OKのガイドさんは貴重。

ここで正直にお伝えしておきたいこと。屋久島の山は、高齢者を受け入れてくれるガイドさんが、実はそう多くありません。安全に責任を持つお仕事ですから、当然のことです。

そんな中、観光協会を通して紹介していただいたのがHさん。当時すでに70代でいらっしゃるのに、毎日筋トレを欠かさず、腕も肩もムキムキ。「80歳までガイドを続けるのが目標なんですよ」と、にっこり。

同世代がこんなに元気に山を歩いている——それだけで、私の背筋もしゃんと伸びました。たくましい腕を見て、思わず自分の二の腕をそっと隠したのは、まあ、ご愛敬ということで。

専属ガイドまでは必要ないかなって方でも安全のために必ず、ツアーに参加して頂きたいです☺️

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苔・湿原・澄んだ川——人に会わない静けさ

歩き始めると、そこはもう別世界でした。流れる川の水の澄んでいること。木道の先には湿原が広がり、岩という岩を、ふかふかの苔が緑のじゅうたんのように覆っています。光が差すと、苔がきらきら輝いて、まるで森全体が呼吸しているよう。

黒味岳登山道の道標。「宮之浦岳7.4km 花之江河3.6km 淀川登山口0.6km」
屋久島の登山道で、ふかふかの苔に覆われた木の根と岩

そして何より、人にほとんど会わないのです。聞こえるのは水の音と鳥の声だけ。この静けさを独り占めできるなんて、なんという贅沢でしょう。「縄文杉より、もっといい所」——ガイドさんの言葉に、深くうなずいた瞬間でした。

花之江河 ― 日本最南端の高層湿原

登山道の途中にある花之江河(はなのえごう)は、日本最南端の高層湿原ともいわれる場所。木道が敷かれた湿原に小さな池塘(ちとう)が点在して、霧でも出ようものなら、この世のものとは思えない静けさに包まれます。私はここでしばらく足を止めて、ぼんやりと見惚れてしまいました。

「屋久島国立公園 花之江河」の看板。日本最南端の高層湿原
屋久島・花之江河の高層湿原。枯れ木と苔むした湿地が山に囲まれて広がる
花之江河の湿原に敷かれた木道と、点在する小さな池塘(ちとう)
花之江河の木道と立ち枯れの木。霧のない日の静かな湿原の風景

淀川登山口から山頂まで

スタートは標高約1,360メートルの淀川(よどごう)登山口。ここから淀川小屋を経て花之江河へ進み、黒味分かれという分岐を山頂方向へと登っていきます。往復でおよそ6〜7時間が目安。宮之浦岳への縦走路の途中にあるので、健脚の方は両方を一日で、という方もいますが、私は黒味岳だけでも十分すぎるほど満足でした。

「世界自然遺産地域」の案内板の横に立つ70代ひとり旅の女性
「屋久島国立公園 淀川小屋」の看板と丸太造りの山小屋
淀川登山口近くの澄んだ川。川底が透けて見える清流と木々

山頂で待っていた360度の絶景

黒味岳山頂の「黒味岳 Mt.kuromidake」の木の標識と奥岳の山並み
黒味岳山頂の岩の上で両手を広げる70代ひとり旅の女性。360度の山の眺め

山頂の手前には、ロープや鎖を頼りに大きな岩をよじ登る区間があります。ここが黒味岳の「正念場」。慌てず、三点支持でゆっくりと。古稀の身には少しばかりスリルがありましたが、登りきったときの達成感といったら、言葉になりませんでした。

岩の上に立つと、ぐるりと360度の大パノラマ。目の前には宮之浦岳や永田岳といった奥岳の山並み、振り返れば青く光る海、晴れていれば種子島まで見渡せます。風に吹かれながら「ああ、ここまで来てよかった」と、しみじみ。同世代のみなさん、空に一番近い場所は、まだまだ私たちにも登れますよ😊

触れられる屋久杉「紀元杉」

紀元杉の説明板。「樹高19.5m 胸高周囲8.1m 樹齢約3,000年 標高1,230m」
紀元杉を見上げた一枚。屋久島で触れられる樹齢約3,000年の屋久杉

この日の忘れられない出会いが、紀元杉(きげんすぎ)です。屋久島の有名な縄文杉は保護のため、遠くから眺めるだけ。ところがこの紀元杉は、車で行けて、しかも触れられる屋久杉なのです。

ごつごつとした幹に、そっと手のひらを当ててみました。目を閉じると——何千年という時の流れが、手のひらから静かに伝わってくるような気がして、不覚にも胸がいっぱいに。私が生まれるずっとずっと前から、この木はここに立ち、これからも立ち続ける。そう思うと、自分の悩みごとなんて、ちっぽけに思えてくるのでした。

屋久杉と、伐採の歴史のこと

紀元杉周辺の森。屋久杉の太い幹に蔓が絡みつき、若葉が茂る
屋久島の森で、苔とシダにびっしり覆われた屋久杉の古木の幹
屋久島の森で、根が複雑に絡み合った屋久杉の古木の根元

ガイドさんが教えてくださった話も、心に残りました。屋久杉は江戸時代から明治にかけて、たくさん伐られてしまった歴史があるそうです。

そんな中で「出来損ない」とされて伐られずに残った杉が、皮肉にも今、こうして何千年もの命をつないでいる——。まっすぐで見栄えのいいものばかりが切り出され、不格好なものが生き残った。なんだか人生にも通じる話だなあと、しみじみしてしまいました。

おわりに

12時間の山歩き、正直、足はくたくた。でも心は、これ以上ないほど満たされていました。紀元杉に触れた感触は、今でも手のひらに残っています。明日はガイドさんの車で、島をぐるりと一周する予定。お猿さんに混浴温泉…と、こちらも盛りだくさんの一日になりそうです。

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